「じゃあね、今日はありがとう」
「うん、気を付けてね陽生ちゃん」
「大丈夫だよ、あ、朔、ちゃんと紅実を家まで送って行くんだよ」
「心配しなくても同じ方角なんだから送るよ。いいからとっとと行け」
「ははっ、またね」

ファミレスで3時間ほど過ごして店を出ると、陽生ちゃんは新幹線のチケットを買いに行くと云って駅前の方に向かって歩いて行った。

私は例の如くピアノ教室があったから一緒には行けなかった。

「あーあ…最後までタイミングが合わないなぁ」
「何、陽生と一緒に行きたかったの」
「ううん…どうせなら三人で帰りたかったなって思って」

私がそう云うと朔はちょっと厭な顔をした。

「其れって俺とふたりでは帰るのつまらないって事?」
「違うよ、そういう意味で云ったんじゃないよ。ただ…朔とはずっとずっと一緒に帰れるけど陽生ちゃんとはこういう機会ってもうないんじゃないかなって思ったら…」
「…」
「ん?」
「…そういう事、か」

朔の顔を見上げると少しバツが悪そうな顔をしていた。

「ひょっとして妬いちゃった?」
「…」
「だったらおあいこだよ」
「え」
「だって…私だって妬いているんだから」
「何に」
「…先刻、陽生ちゃんが云っていた事」
「…」

何か思い当ったのか朔は益々バツの悪そうな顔をした。

「私、知らなかった。朔がラブレター貰うほどにモテるなんて」
「そ、れは…」
「本当なんだね」
「……あぁ」
「ひょっとして直接告白された事もあるの?」
「………ある」
「…」

(嘘、つかないんだよね、本当)

朔の性格を知っているから朔から出た言葉は基本信じている。

「なんで黙っていたの?私に隠していたって事だよね」
「…要らぬ心配させたくなかった」
「え」
「俺、紅実以外の女に興味ないから、告白とかラブレターとかもらっても其の場で断っていた。だからそういうのわざわざ紅実に云う事はないかなと」
「…」
「だから黙っていたん…だけど…ごめん」
「……もぅ」

(無意識なのかな)

朔から飛び出す言葉はこんな時まで私を喜ばせる。

『紅実以外の女に興味ない』

其の言葉だけで燻っていた苦い気持ちが一気に晴れてしまった。

「紅実?」
「…もういい。赦す」
「本当?よかった」

心から安堵したって顔をした朔が可愛いくてまたドキッとさせられた。

(惚れた弱味かな…朔の事、怒れない)

そんな事を思いながらそっと朔の手を取った。

「ん」
「手…繋いでもいい?」
「もう繋いでいるじゃないか」

そう云いながら朔は私の指に自身の指を絡めた。

(あ…恋人繋ぎ)

絡めてくれた事が嬉しくて自然と頬が緩む。

自宅までの道のりがあっという間に感じられる。

(もっと…もっとずっと繋いでいたいなぁ)

自分の体の一部が好きな人と繋がっているという事だけで私は幸せの絶頂にいたのだった。

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