静かな空間にしばらくふたり分の荒い息が響いた。

「…謝らない」
「…え」

十六澤が苦し紛れに吐き出した言葉に一瞬呆気に取られた。

「キス、したの…謝らないから」
「…」
「おまえが余りにも可愛過ぎるのが悪いから」
「!」
「我慢なんて出来っこない」
「~~~」

(な、なんて超ドストレートにっ)

十六澤の偽りのない率直な言葉に胸が熱くなった。

「でもキス以上はしないって…約束するから」
「…」
「だから…其の…」
「…」
「キスだけは…無礼講でさせてくれ」
「……ぷっ」
「え」

思わず私は笑ってしまった。

(何…なんなの…本当)

十六澤がこんな性格だったなんて知らなかった。

乱暴で粗暴で、俺様みたいないけ好かない性格だとばかり思っていた。

 だけど目の前にいる十六澤は嘘がつけない正直者。

相手を思いやりながらもやんわりと自分の気持ちを伝えてくれる。


(あぁ…どうしよう…)


付き合い出してからどんどん十六澤の事が好きになる。

先刻だって私は一瞬『このまま先に進んでもいい』──と考えてしまった。

十六澤になら…

捧げたっていいと思ってしまったというのに。

「な、何笑っているんだよ」
「…ごめんね?だって無礼講で、だなんて堅苦しい云い方」
「~~~」
「…いいよ」
「え」
「キス、したくなったら…して、いいから」
「……」
「私も……十六澤とキス…したい、から」
「……ぁ」

真っ直ぐ見つめてそう云った私を十六澤は何ともいえない顔をした。

嬉しそうな、泣きそうな…

何とも形容しがたい表情を浮かべ、そしてやっぱり耳を濃く染めていた。

そして自然に近づいて来た十六澤の顔に私も角度を合わせて寄せた。



キスを続ける事数十分。

私たちは今日、何のために此処に来たのかという目的を思い出し、ようやくキスを止めたのだった。

ままごとマリッジ
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