「十六澤」
「!」

外している視線の先に移動して顔を覗き込むように近寄った。

「こっち向いてよ」
「お!おまえ~~~」
「あっ」

床に付いていた手を取られてあっという間に其の場に押し倒されてしまった。

少しだけ頭を打ってしまって目を瞑ってしまったけれど、瞼を開けた視線の先には頬を赤く染めた十六澤の顔が間近にあった。

「…い、十六澤…」
「…」
「あ、あの…約束…」
「…」
「何もしないって…約束…」
「…おまえが変に煽らなければしない」
「え」

(煽らなければって…其れって…)

つい先ほどの行動が十六澤を煽っていたのか──と気が付いた。

(そんなつもりじゃなかったのに…でも…)

私の無意識の行動が十六澤を暴走させてしまうかも、と思ったら怖くなった。

でも、怖くなったと同時に気が付くもうひとつの微かな欲望。

(…私…十六澤になら…)

ぼんやりとそんな事を考えている内に私は十六澤によって上体を起こされた。

「…悪い、怖がらせた」

十六澤はバツが悪そうに視線を外しながら謝ってくれた。

でも十六澤は何も悪くない。

だから私は其れを伝えたくて精一杯の笑顔を十六澤に見せた。

「謝らないで?私、怖くないよ」
「っ」

自分では上出来な返しだと思っていたのだけれど

「…十六澤?」
「…本当、参る…」
「え」

十六澤が何を云ったか理解する前に私の体が強く引き寄せられ、其のまま唇が強く塞がれた。

「っ!」
「…ん」

(いきなり…なんでっ)

初めてではなかったキスだったけれど、この時のキスは前にした時とは少し違っていた。

(え)

薄く開いていた唇に十六澤の舌が入って来た。

「んっ」

驚いてしまって咄嗟に十六澤を押し戻そうとした。

だけどガッシリ抱かれた体はビクともしなくて、私の抵抗虚しくキスはどんどん深くなって行く。

(ど…どうしよう…!)

初めての事に戸惑っていたけれど、段々十六澤の舌遣いに合わせていた私がいた。

「ん、んっ」
「…っ、ん」

耳元で煩い程に恥ずかしい水音が響く。

とても恥ずかしい事をしていると解っていても止める事が出来なくてもどかしかった。

(もっと…もっとずっと…していたい…)

そんな気持ちに浸かっていたグズグズの頭は、唐突に唇を放された事により正気に戻った。


「はぁはぁはぁ…」
「っ…ん、はぁ…」

ふたりして息を整えるのに必死だった。

ままごとマリッジ
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