『──其れは俺も同感』

十六澤から発せられた其の言葉は

『そうよ!私が十六澤に対してそんな気持ち…す、好き、だなんて…天変地異が起きたってならないんだからね!』

という私の言葉を受けて出た言葉なのだろうと解った。

「…おまえさぁ」
「!」

急に十六澤の視線が私に注がれ益々ドキッとした。

「本人がいない処であんま悪口云うな」
「わ、悪口だなんて…私っ」
「いちいち陽生に云わなくてもいい事を云うなって云ってんだよ」
「っ」

以前のような喚く感じの甲高い云い方じゃなかった。

低く静かに発せられた其の言葉は私を黙らせるのに充分だった。

「朔、何怒っているの?」
「あぁ?怒ってなんかいねぇよ」
「そう、だったらいいけど──紅実、行くよ」
「…あ、うん」

少し立ち止まってしまっていた私を気にして陽生ちゃんが傍に寄って来てくれた。

「大丈夫、気にしなくても朔なら一晩寝たら忘れちゃうから」
「…」

陽生ちゃんが遠回しな慰めを云ってくれる。

けれど私の頭の中にはグングン先に歩いて行ってしまう十六澤の姿しか映っていなかった。



(あんな事…云うつもりじゃなかった)

自宅に帰ってからも考えるのは十六澤の事ばかりだった。

つい弾みで心にもない事を云ってしまって、其れを聞いてしまった十六澤の顔を思い出すとギュッと胸を強く鷲掴みにされているみたいだった。

(やだ…厭だ…)

折角普通に喋られる様になったのに…

喧嘩しないで他愛無い話が出来るのがなんとなくいいなと思っていたのに…

(また前みたいな関係に戻っちゃうの?!)

そんな事を考えたら居ても立っても居られなかった。




「はぁはぁはぁ…」

薄暗くなりつつある住宅街を私は小走りしていた。

そして乱れた息を整えつつ私は辿り着いた目の前の家を見つめた。

(ちょっと…怖いけど…)

思い切ってインターホンを押した。

ピンポーンという音からしばらく経って

『はい』

聞こえて来た綺麗な甲高い声の応対にドキドキしたけれど勇気を出した。

「あ、あの…私、十六澤…朔、くんと同じクラスの真柴と云いますけど…朔くん、いますか」

ままごとマリッジ
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