今まで抱いて来た気持ちが変わってしまうなんて事、思いもしなかった。


「え、おまえも鴻南高受験すんのかよ」
「って事は…あんたも?」
「俺の頭じゃギリギリ行ける公立が鴻南なんだよ──おまえは?なんで鴻南?」
「…」
「何」
「…あんたと同じよ」
「はっ、なんだよーせめておまえぐらい陽生と一緒の高校に行ってやれよ」
「無理だよ、偏差値72だよ?!目ん玉飛び出るわよ」
「まぁ、確かにな──はは、俺ら、陽生のダチとして失格かもな」
「…」

気が付くとこんな風に何でもない事を話すようになっていた。

夏休みが終わり、新学期になって席替えをして離れ離れになったというのに、休み時間になると何となく近寄って他愛のない話をする様になっていた。

(おかしい…本当におかしくなっちゃったよ、私…)

前みたいに十六澤の顔を見て腹立つ事がなくなり、わざわざ喧嘩腰に話す事も無くなった。


「なんか…噂、本当になりつつある?」
「え」

2クラス合同の体育の時間が終わり、更衣室で着替えをしている時に有紗がボソッと呟いた。

「夏休みが終わってから紅実と十六澤くん、雰囲気変わったじゃない」
「え、そ、そんな事」
「あるよ。確実に」
「~~~べ、別に…あえて…わざわざ気分悪くなるような話し方、しなくなっただけの事で…」
「あぁ、そう。まぁそういう事でいいわよ」

有紗は含み笑いを湛えて私の顔を眺めた。

「…何よ」
「遠目から見てるとさ、紅実と十六澤くん、結構いい感じだよ」
「っ!」

其れだけ云って有紗はじゃあねと手を振って先に更衣室を出て行った。

(何よ…いい感じって!)

そんなんじゃない!──と心の中で喚きながら私も更衣室を後にした。




「紅実、朔とようやく仲良くなったの?」
「はっ?!」

其の日の放課後、たまたま一緒になった陽生ちゃんと下校中、そんな事を云われて素っ頓狂な声が出てしまった。

「いやぁ…ちょっと小耳に挟んだからね。僕としては喜ばしい事だなと」
「なってないわよ!其れ、誤解だから!」
「え、そうなの?──でも…前みたいな剣呑な感じじゃないよね」
「ま…まぁ、前よりは…少しぐらいは…」
「好きなの?」
「───は?」
「朔の事、好きになっちゃった?」
「は…は、は……はぁぁぁぁ?!」

陽生ちゃんの爆弾発言にカァと顔が熱を持った。

「赤くなったね、顏」
「こ、これは…怒りの赤よ!な、なんで私が十六澤を?!ありえない!」
「そうなの?」
「そうよ!私が十六澤に対してそんな気持ち…す、好き、だなんて…天変地異が起きたってならないんだからね!」

「──其れは俺も同感」

「え」

後ろから聞こえた低い声にドキッとした。

徐に振り向くと其処には憮然とした十六澤がいた。

「あれ、朔。後ろにいたんだ」
「…おまえらが見えたから…ってか、帰り道同じ方向だろう」

「…」

(嘘…今の話…訊かれ──)

一瞬足元の地面が崩れ落ちる感じがしてヒヤッとした。

ままごとマリッジ
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