心の何処かでは薄っすら思っていた。

(多分…私の尾行はバレているんだろうな)

昔の苦い記憶が反芻され、そう思いながらも後を付ける事が止められなかった自分自身が情けなかった。


少しの間を空け、私は十六澤の後を付けた。

そして行き止まりを左に曲がると公園の入り口が見えた。

一見して人気はなかった。

夏の暑い昼下がり。

多分一日の中で一番暑いだろう15時過ぎの公園で遊んでいる子どもはひとりもいなかった。

パッと見、公園に入って行っただろう十六澤の姿も見えなかった。

(またトイレに入っているのかな)

ジャリジャリと砂を踏みしめる音をさせながら私はトイレに近づいて行った。

トイレの入り口まで来て、足を止める。

(さて…どうしたものかな)

そんな事を考えていると

「おまえって本当変わらねぇのな」
「!」

不意に掛けられた声にビクッと体が撓った。

「な…な、なっ」

慌てて周りを見渡すと、トイレ横の奥まった場所のベンチに座っている十六澤の姿があった。

「相変わらず俺のストーカーしてんのか」
「なっ!ち、違うわよ!ストーカーなんかじゃないわよ」
「ははっ、ムキになってら。図星か」
「違うって云ってるでしょう!」

後を付けていたという罪悪感からちっとも冷静になれていない私は急に目の前がフッと暗くなった気がした。

「っ」
「おい!」

クラッとして体が前後に揺れたと思った瞬間、私の体は力強いもので支えられた。

「…ぁ」
「おまえ、ふらついてんじゃん。座れよ」
「…」

この炎天下の中、図書館から徒歩で15分程歩いて来た。

あまり気にしていなかったけれど直射日光にやられていたのかも知れない。

「ほら、これ飲め」
「…え」

十六澤から差し出されたのはスポーツ飲料だった。

「水分補給して少し此処で座っていろ」
「…」
「此処、穴場のベンチだぜ。樹の葉っぱが日光遮って時々風が通り抜けるからな」
「…」

珍しく十六澤が皮肉以外の言葉を発したから私の荒ぶっていた気持ちは徐々に落ち着いて来た。

十六澤から手渡されたスポーツ飲料をひと口ふた口含むと人心地ついた。

チラッと横目で十六澤を見ると、十六澤も水筒に口をつけていた。

「…試合」
「あ?」

思わず声を掛けてハッとした。

(何、普通に喋ろうとしているのよっ)

今までになった事がない気持ちになった事態に戸惑った。

だけど

「…今日、引退試合だったって…サッカー部」
「あぁ。今日で3年は終いだ」
「勝ったの?」
「当然」
「…ふぅん」

短いやり取りだったけれど、こんな風に皮肉も厭味も怒鳴り合いもない会話はもしかしたら初めてだったかも知れないなと思った。

ままごとマリッジ
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