「紅実、ごめんね。どうしても必要な参考書が欲しくて…このまま本屋に寄って行くから」
「うん、大丈夫だよ。ってか私もごめんね、一緒について行けなくて」
「いいから謝らないで──其れより早く帰らないとピアノ、遅れちゃうよ」
「うん、じゃあね」

図書館から出た私たちは帰り道が別になった。

 私はピアノの教室があって、陽生ちゃんは買い物があるといってお互い別方向に歩き出した。


(あーあ…本当は一緒に帰りたかったなぁ)

家が近所だから余計にそう思った。

(別にこれっきりでふたりでいられなくなるって事はないのに…)

そう思っていても何故か胸にはある種の焦燥感が居座っていた。




(…ん?)

家の近くまで来た処で細長い後ろ姿が見えた。

(あれって…)

考えるまでもなく、体操服姿のあののっぽには厭というほど思い当る人物がいた。

(げ~~よりにもよって十六澤と鉢合わせた~~)

気付かれるのが厭で私は歩く速度を緩めた。


すると


(あ)

自宅手前の曲がり角で十六澤は曲がってしまった。

(なんでまっすぐ家に帰らないの?)


私の中に昔の記憶が蘇った。

小学6年生の時記憶が。


(十六澤は真っ直ぐの帰り道をいつも手前の角で曲がって公園に行っていたっけ)

一時謎に満ちた十六澤の奇行が気になっていつも後ろ姿を追っていた事を思い出す。

だけどそんな行動も──


『おまえになんか教えるかよ』


尾行していた事に気が付いていた十六澤が私に向かって蔑む様に放った言葉に何故か気持ちが乱れ、其れ以上深追いする事なく謎を残したまま終わっていた。


(あいつ…まだ何かやっているの?)

何年か振りに目にした奇行が昔の記憶を触発して、どうしても真相が知りたくて仕方がなくなってしまった。

(やっぱり気になる!ハッキリさせたい!)

小学生の時から胸に燻っていた謎をスッキリ解きたい気分になってしまった私は、自然と十六澤の後を付けていたのだった。

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