「へ?」
「おっと、悪りぃ。丁度いい処に肘掛けがあったからつい乗せちまった」
「……」
「あぁ?なんだよ、其の阿呆面(ヅラ)」
「…あ、あんた…」

私の頭に乗せていた肘を放しながら其の男子はニヤニヤしながら私を見下ろしていた。

「しっかしついてねぇな。なんで最後の最後でおまえと同じクラスになるかね」
「……」
「頼むから極力俺の視界に入らないよにちっさくしていろよ」
「……」

厭味たっぷりの言葉を残して私の元を去った男子は他の生徒の頭より一個分抜き出ていた。

「ねぇ…紅実、今のって…十六澤くん…だよね?」
「…え」
「ひゃぁーいつの間にあんなに背、高くなったの?2年の終業式の時はあんなに大きくなかったよね?」
「……や、やっぱり…あれ、十六澤…なの?」
「でしょう?顏はまんまだったけど…あ、でもちょっと大人びいて…小路くんに負けず劣らずって感じになっていたよね」
「~~~~っ」

(ビ、ビックリしたぁぁぁぁぁぁ)

私の頭を肘掛け代わりにした男子は十六澤だった。

だけど私の記憶の中にあった十六澤とは余りにも変わっていて一瞬誰だか解らなかった。

(だって…だってだって)

記憶にある十六澤は子ども子どもしていて、背丈だって私よりほんの少しだけ高かったイメージ。

真面に顔を合わせて話したりしていなかったから私の中での十六澤のイメージは貧相なままだった。

チビで口が悪くて粗暴で横暴。


───だったはずなのに


「あれ、絶対170…ううん、ひょっとしたら180近くはあるよね?めっちゃ高かった!ってか春休み中に何があったのって感じー」
「ねぇ、人間の背っていきなりあんなに伸びるものなの?!」
「さぁ…でも成長期だったらありうるんじゃないの?特に男子って中学生でいきなり伸びたりするっていうじゃない?」
「其れにしたって…伸びすぎでしょうぉ」

今しがたあった事がまるで別世界で起きた出来事のような気がした。

だけど教室に行けばやっぱり其処には他の男子より明らかに出っ張っている十六澤がいた。

「おい、おまえなんでいきなりそんなに背が伸びてんだよ」
「十六澤、ひょっとして宇宙人に連れられて変な実験されたんじゃねー」
「んな訳あるか。寝て起きてサッカーして牛乳飲んで寝て起きてって生活してたらいつのまにか伸びてたんだ」
「ってかおまえ、勉強いつしてんの。一応受験生だぜ、オレ等」
「あーそんなのまだ先じゃん。今はサッカーやんので精いっぱい」
「ったくよー十六澤らしいっちゃーらしいのな」

(…)

男子数人が群れて十六澤の背について話しているのが何となく聞こえて来た。

(サッカーして牛乳飲んだだけでそんなに伸びるかっ)

心の中でチャチャを入れるけれど、其れにしても男子の成長って凄いんだなと思った。

(…なんか…変なの)

ずっと知っているつもりだった人が知らない人になって行くようである種の焦燥感が湧いた。

(陽生ちゃんもなぁ…)

中学2年生の時声変わりした陽生ちゃんが全然違う人に見えた事を思い出した。

(あの時…相当ショックだったんだよな)

陽生ちゃんが先に声変わりをしていたので、其の後十六澤が声変わりしても大した衝撃はなかった。

(なんかさ、声だけ聞いていると…大人、みたいなんだよな)


小学生とは確実に違って来ている私たち。

そんな成長が顕著に表れて来るのが中学生だった。


まだほんの三年前の事。

いつも陽生ちゃんと一緒にいて、ずっと幸せな毎日を過ごしていけるのだと信じて疑っていなかったあの頃がとても懐かしいなと思った私だった───

ままごとマリッジ
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