チラッと横目で十六澤を見る。

小学生の時と変わらない背丈で陽生ちゃんの様に背の高さによる威圧感はなかった。

(こいつはこのままチビのままだね、きっと)

ププッとほくそ笑んだ私に気が付いた十六澤が肘で私の腕を小突いた。

「ちょ…痛いなぁ」
「不気味に笑ってるんじゃねぇ。空気が淀む」
「はぁ?私の爽やかな笑顔にそんな邪悪な効果、ありませんけどぉ」
「あぁ、自分じゃ解らないんだな。おまえから発せられている淀んだオーラが」
「~~本っ当、あんたっていつまで経っても腹の立つ男ね!」
「おぉ、気が合うな、其の意見には俺も同感だ。おまえほど腹の立つ女、この世の何処にもいねぇからな」
「十六澤ぁぁぁぁー!」

「あーあ…君たち、本当心底相性が悪いねぇ」

陽生ちゃんのため息混じりの言葉を背に受けて、今日も十六澤といがみ合う毎日が始まる。

(本当に鬱陶しいったらありゃしない!)

十六澤さえいなかったら以前のような陽生ちゃんとの平和で平穏な毎日が送れていた筈なのにと──そう思う度に十六澤の存在が疎ましくて堪らなかった。



「相変わらずねぇ、紅実たちって」
「何よ、開口一番に」
「だってあんたたち、ちょっとした有名人よぉ。いっつも三人一緒にいるって」
「好きでいるんじゃないわよ!陽生ちゃんとだけいたくても、もれなく十六澤がついて来るのよ」
「だから相変わらずだって云うの。紅実はさ、もっと十六澤くんに感謝するべきよ」
「はぁ?何云ってんのよ有紗ってば」

同じ中学校に進学した浅い腐れ縁の有紗とは同じクラスだった。

私は陽生ちゃんとクラスが別々なのに、よりにもよって十六澤は陽生ちゃんと同じクラスだった。

(其れも余計に腹立つ!)

そんな気持ちを抱いている私に、有紗は更に油を注いでくる。

「だって仮に十六澤くんがいなくて小路くんと紅実がふたりで仲良さげに歩いていたらもっと女子たちのひんしゅく買っていたわよ?」
「…」
「其れを十六澤くんがいい感じにストッパーになっているから紅実は助かっているの」
「助かっているって…何よ、其れ」
「一部の女子たちには紅実と十六澤くんは付き合っているって噂まであるんだよ」
「………は?」
「其の誤解のお蔭で小路くんに対するやっかみからも逃れているって訳」
「~~~~じょ…」

(冗談じゃないわよ~~~!!)

誰がそんな噂を流しているのだと腸が煮えくりかえる程に腹が立ったけれど、少し冷静になってみれば有紗の言葉は助言──なのかも知れない。

(…確かに…陽生ちゃんと一緒にいても前ほど痛い視線は感じなくなった…かな)

いつまで経ってもモテる陽生ちゃんの傍にいるという事はそういう対象になってしまうという事。

其れが大っ嫌いな十六澤のお蔭で和らいでいるとしたら──

(…腑に落ちないけど…利用させてもらうしかないのかな)

なんだか女子たちのそういう駆け引きみたいなドロドロした思考が面倒くさいなと思いながらも、ちょっと…いや、かなり腹立しい事態だなとため息をついたのだった。


中学になってからも陽生ちゃんはみんなの陽生ちゃんだった。

クラスでは学級長になったり、生徒会に入ったりして私以外のうんと多くの生徒と知り合って触れ合って、1年生の時は同級生は勿論、2年3年生の先輩たちにも可愛がられて、2年生になった時は更に後輩が加わり、学年の隔たりがないほどに頼りにされる優等生だった。

(なんだか…どんどん遠くに行っちゃう感じがする)

私は2年生になっても陽生ちゃんと同じクラスになれず、3年生こそは同じクラスになれますようにと毎晩お月様やらお星様やらにお願いをして寝るという夜を幾度となく過ごした。


そして3年生の新学期──

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