あの一件以来、私は転校生── 十六澤の事が大っ嫌いになった。

今まで人を嫌いになった事なんてなかった私にとって、生まれて初めての嫌いな人間だ。

嫌いな人間とはなるべく顔を合わせなければいい。

話だってしなければ厭な気持ちになる事もない。


しかし家が近所のせいで、顔を合わせる事が多かった。

おまけに同じクラスだから接する機会はとても多かった。


加えて──


「なぁ、算数の宿題、見せて」
「えっ、またやってこなかったの?ちゃんと自分でやらなきゃ身につかないよ」
「そんな事解ってる。いいから見せろよ」
「仕方がないなぁ。次はちゃんと自分でやるんだよ」
「やる気になったらな」

「~~~っ」

(な、なんでいつの間にか陽生ちゃんと仲良くなってんのよ!)

隣同士の席効果なのか、陽生ちゃんと十六澤はいつの間にか仲の良さが窺える関係になっていた。

(これじゃあ私が陽生ちゃんに近づけないじゃない!)

ただでさえ忙しい陽生ちゃんとはすれ違ってばかりいる。

(くぅぅ~十六澤朔めぇぇー益々厭な奴!!)

「ねぇ、最近あのふたり仲がいいねぇ」
「…有紗」

怒りに震えている私の元に有紗がヘラッとした顔をしてやって来た。

「流石小路くんだよね。問題児の十六澤くんまで手懐けちゃうなんて」
「何よ、其の猛獣使い的扱い」
「だってぇ、なんか怖くない?十六澤くんって」
「…其れは」

(怖いと思っていたの、私だけじゃないんだ)

「話し掛けても、何訊いてもずっとだんまりで。小路くん以外だぁれも十六澤くんとまともに話した事がないんだよ」
「え」

(嘘でしょう?私には滅茶苦茶暴言吐いたわよ!)

「でもまぁ、とりあえず十六澤くんが男子でよかったぁ」
「…有紗って陽生ちゃんの事、好きなの?」
「え?やだぁ、紅実、知ってるくせにー!」
「痛っ」

力任せにバンバンと背中を叩かれた。

「でも、あたしだけじゃないよ」
「え」
「小路くん狙っている女子、めっちゃいるからね」
「…」
「紅実はさ、小路くんと幼馴染みってだけで安心しているかも知れないけど、そんなの全然有利でもないからね」
「…」

有紗の言葉がただの負け惜しみに聞こえなかった。

確かに私と陽生ちゃんは幼馴染みってだけの関係。

物心ついた時から一緒にいるから陽生ちゃんの事は何でも解っているつもりでいた。

でも

(陽生ちゃんって…好きな子、いるのかな)

そういった色恋沙汰に関する事は何も解らなかった。

其れは私も一緒だった。


(私…陽生ちゃんの事…好き、なのかな)

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