『人の後を尾行する様な女の名前なんか其れで充分だ』


転校生の其の言葉を訊いた瞬間カァと体が熱くなった。

「あ、あんた…知って…」
「毎度毎度お粗末な後の付け方してバレないと思っていたのか?…馬鹿だな」
「!」

(なんて口の悪い男!)

今まで寡黙なイメージしかなかった転校生が昨日から私の中でコロコロイメージを変えていた。

(ひょっと口が悪いから今まで喋らなかったの?!)

今のこの状況を自分なりに理解しようとしていた。

「なんで俺の後を付けていたんだよ」
「……別に意味なんてないわよ」
「あ?」

私は出来るだけ冷静に受け答えしようと思った。

(悔しいけれど尾行していた事は…事実なんだから)

私の方が分が悪い分逆ギレみたいになってはいけないと思った。

「ただ気になっただけ」
「…」
「毎日まっすぐ家に帰らないで公園に行くなんて…なんでだろうって気になっただけ」
「…」
「其れだけよ」
「…」

何を云われるか少し身構えた。

尤も何を云われても仕方がないと思ったけれど──

「…ねぇよ」
「え」
「おまえになんか教えるかよ」
「…」

呟く様に吐き捨てられた言葉が心にグサッと刺さった。

別に転校生と仲良くなりたいとか、少しでも話せるようになったらいいなとかそういった事を考えていた訳じゃない。

本当にただの好奇心から転校生の奇行が気になっていた──だけだ。


でも


『おまえになんか教えるかよ』


なんて言葉を訊いた瞬間、私は転校生にとって興味のない、どうでもいい、存在感のない人間なのだと思ったらとても厭な気持ちになったのだ。


(…嫌い)


「紅実?」


(嫌い…嫌い…)


「紅実、どうしたの?十六澤、何かあったの?」
「…別に。断層の絵にちょっとアドバイスしていただけ」
「え、本当に?紅実、なんか泣きそうな顔している」
「…俺の云い方、悪かったのかも」
「紅実、大丈夫だよ、ちゃんと描けてる。だから落ち込まないの」
「…」

顔をしかめて俯いた私を心配して陽生ちゃんが慰めてくれる。

そんな私たちを放って転校生は何処かに行ってしまった。

去る間際、視界の端に映った転校生の顔は昨日と同じ、蔑みを含んだ表情をしていた。


(~~~あんたなんて…大っ嫌い!!)


私は心の中で盛大に転校生を毒づいた。

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