「はぁはぁ…」 

私にしては全速力で駆けてやっと公園に辿り着いた。


(転校生…転校生は何処に…)

辺りをキョロキョロ探すけれど、公園内には幼稚園児位の子どもが三人遊んでいて、其の子たちの親らしい大人がベンチに座って話していた。

(え?おかしいな…いない?)

そんなに広くない公園。

見通しの悪い処などない開けた公園内で転校生の姿は何処にもなかった。


(えぇ?!なんで、なんでいないの?!)


ひょっとして公園に行ってはいなかったのだろうか?

ただの私の思い違いだったのか?

そんな事を考えていた私の視線の先に公園内に設置されているトイレが映った。

(あ、もしかしてトイレ!)

トイレに入っているのだろうと思い、其の傍近くまで行ってみた。


けれど


(…違ったのかな)

何分経ってもトイレからは誰も出てこなかった。

(見に行く──訳には行かないよね)

男子トイレに行く訳も行かず、ただ出て来るのを待つしか手段がないのだけれど…

(いない…よね)

公園の時計があれから30分が過ぎた事を教えてくれる。


(違ったか…じゃあ一体何処に行ったんだろう)


結局其の日は転校生を見つける事が出来なくて私は家に帰ったのだった。





「こぉら、紅実!」
「っ」

家に帰った途端私は母に一喝された。

「ランドセル置いて直ぐに出かけるなんて心配するでしょう」
「ちゃんと公園行くって云ったじゃない」
「其れでも、ちゃんと顔を見せてから行きなさい」
「…はぁい」
「よし!──じゃあ手を洗って晩ご飯の支度、手伝ってちょうだい」
「はぁい」

根本が優しい母は叱る時は叱って、そして直ぐに機嫌を直す。

しつこくいつまでもネチネチと怒りを持続させない処が凄いな、偉いなと子どもながらに感心つつ、私もそう見習いたいなと思うのだった。


(…しかし本当謎だらけだな、転校生)

ピーラーでじゃがいもの皮を剝きながら考えるのは転校生の事ばかりだった。

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