パンダの絵が描かれた引っ越し社の車を見た日の翌日、教室にやって来た先生の隣に男の子が立っていた。

「はい、みんな、転校生を紹介します」

(転校生!)

きっとあの家に引っ越して来た子だと思った。


先生が黒板に【十六澤 朔】と書いた。

「いざさわ さくくんです。十六澤くん、ご挨拶どうぞ」
「………十六澤です」

少し長めの沈黙後、ボソッとそう答えた転校生に周りの子たちがザワザワと騒いだ。

「ほらほら静かにー。じゃあ十六澤くんの席は……小路くんの隣で」
「はい」

名指しされた陽生ちゃんが手を上げて返事をした。

「小路くんは学級委員長だから解らない事は小路くんに訊いてね」
「…」

先生のにこやかな言葉に転校生は特に表情を変えずに空いている席に向かって行った。

(なんか…不愛想な子)

隣に座った転校生に色々話しかけている陽生ちゃんを眺めながらそんな事を思った。



「ねぇねぇ、十六澤くんって何処から来たの?」
「引っ越して来たって何処の町に?学校の近く?」
「ねぇ、どんな女の子が好き?タイプは?芸能人でいったら誰?」

転校生が珍しいって訳じゃないけれど、やっぱり新しい子がやって来るとみんな──特に女子は興味津々だった。

そんな様子を遠巻きで見ているとポンッと肩を叩かれた。

「何を見ているの、紅実」
「陽生ちゃん」

職員室に行っていた陽生ちゃんが教室に戻って来た。

「十六澤、人気だね」
「今だけじゃない?だってなんかあの子、全然話訊いていないよ」

そう。

転校生はいくら周りに話し掛けられても表情ひとつ変えずにぼんやりと頬杖をつきながら窓の外を見ていた。

(本当、愛想のない子)

私は転校生に対して特に興味が湧かず、いつも通り陽生ちゃんと一緒にいた。




キーンコーンカーンコーン


放課後、陽生ちゃんと帰ろうと声を掛けた。

不意に隣の席の転校生と目が合った。

「あ…」
「…」

ジッと見られてなんだかドキッとした。

顏は陽生ちゃんの方がカッコいい。

だけど何故か其の物云いたげな視線が気になった。

「紅実?」
「…! あ」

陽生ちゃんの声にハッとした。

思わず慌ててしまって転校生の机にガタンとぶつかってしまった。

「大丈夫?」
「へ、平気…」

陽生ちゃんが心配そうに声を掛けてくれたけれど、ぶつかった机の主の転校生が気になって視線は其方に向いた。

だけど転校生は特に何も云わずに徐にランドセルを手に取って其の場を立ち去って行った。

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