「真柴紅実さん、あなたはこの男性を健康な時も病の時も富める時も貧しい時も良い時も悪い時も愛し合い敬い慰め助けて変わる事なく愛する事を誓いますか」

「はい、誓います」



(やっと…やっと此処まで辿り着いた)


長かった私と彼の道のり。

幼い日に出逢ってから恋をして結ばれるまでの過程には色んな事があったけれど…

でもそんな道のりも今日という晴れやかな瞬間に全てがいい想い出として塗り替えられてしまった。



「では誓いのキスを」

神父様の言葉を受け彼がゆっくりと私のベールを上げる。

「…紅実」
「…」

彼の優しい声と共に視界がクリアになり、愛おしい彼の顔が鮮明に私の目に映った。

(あぁ…好き…大好き)

心からそう思える人と結ばれるなんて、私はどれだけ幸せ者なのだろうと涙が出そうになった。


「誓いのキスをするのに泣いたらダメだろう?」
「…うん…そうだね…」

唇が近づきながら彼が囁く様に云った言葉に微笑む。

「紅実、愛している─── 一生大切にするから」
「私も…一生愛し続けます」

誓いのキスを交わした瞬間、教会の鐘が高らかに鳴り響き、列席者から温かな拍手が送られた。




生涯にたったひとり。


心から愛した人と結婚出来る事以上の幸せを私は知らない。


そして


この結婚が私と彼の幸せのゴールではない事も…


この時の私は知らなかった。








──しばし時は遡る──







「陽生ちゃーん!おはようー」
「おはよう、紅実」

小学生の私は毎朝近所に住む幼馴染みの陽生ちゃんと学校に行っていた。

新興住宅街に住む私と陽生ちゃんは同い年で、お互いちいさい時に引っ越して来た縁で物心つく頃からの付き合いだった。

「あ、パンダさん」
「引っ越し業者の車だね。この間建った家に新しい人が越して来たみたい」
「へぇ」

登校途中にある道沿いにはまだ建設中の家が何棟かあった。

大抵家族連れが引っ越して来る事が多くて、中には私たちと同じくらいの子どもがいたりして通う小学校に転校して来る。

「同い年の子、いるかな?」
「どうかな。いたら転校して来るだろうね」
「男子かな、女子かな」
「まだ同い年で、転校して来るって決まった訳じゃないよ」
「そうだけどー女の子だったらいいな~陽生ちゃんは?どっちがいい?」
「僕はどっちでもいいよ」
「あ、でも女の子だったら陽生ちゃん、取られちゃうかな…其れはちょっと厭…かも」
「そんな事考えるの?紅実はおませだね」
「おませ?どういう意味?」
「ふふっ」
「あ、笑って誤魔化した!もう、陽生ちゃんってばすーぐ大人ぶるんだからー」


小学6年生の私、真柴 紅実(マシバ クミ)は幼馴染みで仲の良い小路 陽生(ショウジ アキ)と過ごす毎日が全てだった。

勿論他にも友だちはいたけれど、陽生ちゃんと過ごす時間はとても愉しくて私にとっては特別なものだった。


しかし


そんな愉しくも平穏な毎日が打ち破られてしまう日が来るなんて、今の私には知る由もなかったのだ。

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