今、目の前で真っ赤になっている色男に対してよからぬ妄想ばかりが頭を支配していた。 

(実に惜しい…)

これで男好きだったら最高なんだけどなぁ──なんて妄想してドキドキしてしまう。

(いやいや、いかんいかん。彼は歌也のもの)

蕩け切った頭を冷やして少し居を正した。


「そういう事なら心配要らないわよ」
「え」
「三杉さんはそんな事で豹変する人じゃないから」
「…でも」
「三杉さんはね、歌也のお母さん──佳澄さんと同じ出版社で働いていて、佳澄さんの直属の部下なの」
「え」
「だから絶対歌也に酷い事はしない。これはわたしが保証するわよぉ」
「…ほ、本当に」
「お姉さんの云う事信じなさい」
「…」
「其れに歌也の事も信じなさい」
「!」
「ちゃんと君に三杉さんに会いに行く事を告げた其の意味を考えなさい」
「…」
「歌也を──泣かせないで」
「…涼花、さん」

わたしの言葉で項垂れる色男もいいものだなと、そんな事を考えながら其の一挙手一投足を眺める。

(はぁ…しかし本当に美しい男だな…)

歌也が彼の事を忘れていただなんて信じられない。

其れほどに一度逢えば忘れられない造形をしている男だった。

(まぁ、ちいさい時と印象は変わるだろうから無理ないかも知れないけれど)

「…あの」
「ん?」

ようやくノロノロと浮上した彼が私を見つめた。

「この事…歌也ちゃんには…」
「あぁ、云わないよ。歌也をくだらない事で悩ませたくないしねぇ」
「くだらない…」
「君、歌也の王子様になるんでしょう?」
「!」
「だったらもっと大人になりなさいねぇ」
「…」
「大人になるって今直ぐ背伸びをしてどうこうするっていう意味じゃないよ?年相応の背伸びでいいから歌也と寄り添って成長しろって事だからね」
「……し」
「し?」
「師匠!」
「…は?」
「涼花さんは恋愛の師匠です!師匠って呼んでもいいですか?!」
「や、やだ!何よぉ其のダッサい呼称」
「涼花さんはちいさい時から歌也ちゃんと一緒にいたんですよね?是非歌也ちゃんとの事で俺に教えを説いてください!」
「はぁぁぁ?!」

(やっば…何か変な事になって来たぁ)

其の見た目からは想像がつかない程に純粋無垢──というか、歌也に一直線な、ある意味歌也バカ振りに驚きつつも、少しだけ歌也の相手がこんな子でよかったなと思ったのだった。






「くしゅん!」
「高科さん、大丈夫?」
「はい…なんか、急に鼻がムズムズして…」

(誰か私の事噂しているのかな…?)

不意に背筋がゾクッとしたのは気のせいかなと思った私だった。

王子様の作り方
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