少しだけ騒がしかった昼休憩も残り10分ほどで終わろうとしていた。

志麻子と別れて私は庶務課のある階の人気のない廊下を歩いていた。

給湯室を通り過ぎ、もう直ぐでフロアだと思った瞬間

「っ!」

給湯室の隣にある部屋のドアがいきなり開き、伸びて来た手に腕を取られて其のまま中に引っ張り込まれた。

薄暗い部屋にバタンとドアが閉まる音が聞こえた。

「な、何っ」
「しーっ」
「!」

閉まったドアにもたれるようにいたのは恭輔だった。

「静かにして」
「こ、九重くん?!急にどう──」
「ふたりだけだよ」
「…」

見上げられた視線が艶っぽくてドキッとした。

「…いきなりどうしたの、恭輔」
「杏奈とふたりきりになりたかったから」

そう云いながら恭輔は私の腕を取って引き寄せ、其のまま体を掻き抱いた。

「ふたりきりにって…此処、会社だよ」
「そうだね」
「…こんなの、初めて」
「うん」

私の胸に顔を埋めながら恭輔は応える。

「何?どうかしたの」
「…ちょっと…厭だった」
「え」
「先刻の」
「…」

恭輔が何を云いたいのか解った。

先刻の休憩中にあった事、そして恭輔と視線を合わせた時の何ともいえない表情を見た時、もしかしてと思ったから。

「ひょっとしてやきもち、妬いた?」
「…うん」

素直に云ってくれる恭輔が堪らなく可愛かった。

(どうしよう…胸が張り裂けそう)

胸が高鳴ってドキドキが加速して行く。

「あんなの全然何とも思わないよ。其れにね…私もやきもち、妬いたよ」
「え」

私の言葉を訊いた恭輔が顔を上げた。

「先刻、恭輔が女の子に両脇抱えられていて愉しそうにしていたのを見て」
「! 両脇に抱えって…あんなの全然なんでもないよ」
「其れでも、いいなって思ったし…羨ましいって──んっ!」

言葉の途中で背伸びした恭輔に唇を塞がれた。

「ん…んっ」
「ん、はぁ」

強く押さえつけられる恭輔の唇が器用に私の唇を割って、其のまま暖かく柔らかい熱を差し込まれる。

「あ…ん、んんっ」
「はぁ…ん…んん」

クチュクチュと音を立てながら其の甘い行為に酔いしれた。


やがて午後の始業開始5分前のチャイムが聞こえて来て、其処でようやく私たちは唇を放した。

「はぁはぁ…っ」
「ん…はぁはぁ…」

新鮮な酸素を取り込む様にふたりして大きく息を吸ったり吐いたりした。

「なんか…お互い様って感じ?」
「え」
「俺と杏奈」
「…うん」

恭輔の言葉に頷くと見下ろした視線が絡み合って、何となくもう一度軽く唇が重なった。

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