「え、デート?」
「うん♪」
「…まさかとは思っていたけど…杏奈…あんた」
「もう、志麻子が云いたい事、解ってる」 


翌日のランチタイム。

いつもの様に社食で志麻子と一緒に過ごしていた。

(本当は恭輔と一緒に食べたいんだけど)

同じ食堂内にいる恭輔に視線を向ける。

恭輔は新入社員同士の数人と輪になって食事をしていた。

(はぁ…いいなぁ)

和気あいあいとしているのを遠目で見て、其の輪に入れない私は惨めだなと思ってしまう。

男性に雑じって女子社員も2人いた。

恭輔の両隣に陣取っているふたりがなんだか恭輔を狙っているみたいに見えて少しだけやきもきしてしまうのだった。


「おぉーい、杏奈さん」
「! な、何」
「あんた、視線が怖い」
「…」
「何よ、そんなに好きなの?」
「……うん」
「あんなに子ども子どもしている男の事が?あんた全然眼中にないって感じだったのに」
「…其れが…ねぇ」

変われば変わるものだと思った。

出逢った時は絶対付き合わない、付き合えないタイプだと思っていたのに。

(何がきっかけになるか解らないものね)

「まぁ、杏奈が今更誰と付き合おうとあたしは全然興味ないんだけど。でもあの中学生と、っていうのにはちょっと興味あるなぁ」
「絶対茶化すでしょう」
「茶化しますとも。今まで散々杏奈の愚痴に付き合って来たお返しに中学生とのアレコレ訊かせてもらうからね」
「…」

確かに志麻子には今まで様々な愚痴を訊いてもらって、そして解り難い慰めをもらって来た。

(其れに私も誰かに恭輔との事、話したいし…)

公にはしていない付き合いだった。

でもやっぱり誰かに話したい、訊いてもらいたいという欲があったので、其の相手に志麻子は適任だと思った。

「で、何処に行くの」
「あ、デート?…ふふっ」
「何よ、気持ち悪い」
「水族館」
「えぇーなんか中学生デートみたい」
「いいじゃない、行きたいの」
「はいはい、精々愉しんで来なさい」
「うん」

ちょっぴりほの暗い館内を恭輔と手を繋ぎながらユラユラ揺れる水槽を眺める。

(いい!幸せ過ぎる!)

自然とニヤニヤしていたのか、志麻子から「本当気持ち悪いから止めてよ、其の笑い」と何度も注意された。


「──佐東さん」
「え」

愉しい妄想に耽っていた私は、私の名前を呼ぶ声で現実に引き戻された。

000000a5
★ランキングサイトに参加しています。
其々1ポチずついただけると執筆の糧になります。

恋愛ランキング
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村