「あのさぁ、いい加減厭きたんだけど」
「えっ」

濃厚な行為を終えた後、九重くんが放った言葉にドキッとした。

「もー厭きた」
「…其れって…私の…体に?」
「は?」
「やっぱり私の体では満足出来ないって…事?」
「何云ってんの?違うよ!」
「だってもう厭きたって…九重くん」
「其れ!」
「え?」
「杏奈、いつまで俺の事『九重くん』って呼んでるの?」
「…」
「いい加減訊き厭きた」
「…訊き、厭きた…?」
「もう『九重くん』から卒業出来ない?」
「…其れって名前で呼んで欲しいって事?」
「そう」
「…」
「もしかして名前、忘れているとか…」
「…きょうすけ…くん」
「! な、なんだ知っているんじゃない。でもくんは要らない」
「…恭輔」
「うん」
「恭輔」
「杏奈」
「~~~」

ただ名前で呼び合っているだけなのにどうしてこんなに幸せなんだろうと思った。

(呼び捨てで呼び合うなんて今までもあったのに)

今まで何とも思っていなかったごく普通の事なのに何故か九重くんとすると幸せだったり嬉しかったりする。


「ねぇ、今度の休みに何処か出かけない?」
「え、其れって」
「デート」
「…」
「あれ?聞こえている?」
「デート…ですか」
「はい」
「~~~」

勿論、今までだってデートという名のお出かけはした事がある。

ある、のだけれど…

(なんで、どうしていちいち嬉しい気持ちになるのっ)

どんな事でも九重くんとするとなると堪らない気持ちになる。

嬉しい。

幸せ。

ドキドキ。


「おーい杏奈さん?大丈夫ですかぁ~?」

私の目の前でブラブラと振っている九重くんの掌をガシッと掴んだ。

「デート、する!」
「ん、いい返事。じゃあ何処に行こうか」
「何処でもいい」
「え~なんか投げやり?」
「違うの、恭輔となら何処でもいい」
「…」
「海でも山でも、映画でも動物園でもアスレチックだってスポーツ観戦だって」
「色々出て来るね」
「本当何処でもいいの。一緒にいられるなら」
「…可愛い事云ってくれる」

そう云って九重くんはそっと私の頬に手を添えた。

「杏奈って綺麗な大人のお姉さんなのに云う事が幼いね」
「其れ…馬鹿にしてる?」
「していない。色んな杏奈を知れば知るほど好きがいっぱいになる」
「…」

頬に添えられた手が引かれチュッと軽いキスをしてくれた九重くんがあまりにも優しいから泣きそうになった。


(私こそが好きがどんどんいっぱいになる)
 
人を好きになるってこんなにも感情が揺さぶられるものなのだと知ったのは生まれて初めてだった。

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