同じ人から二度告白されたのは初めてだった。

其れにセックスをした後で『好きだ』と云われた事も初めてだった。


「佐東さん~~泣かないで~ごめん、ごめんなさい」
「ち、ちが…」
「…え」
「私…よかった?」
「え?」
「セックス…気持ちよかった?」
「…」
「下手…だと思わなかった?」
「…」

流れ出る涙を抑えながら何とか言葉を吐き出す。

私の今までの恋愛遍歴。

付き合って経験した数だけはやたら多い癖に、長く付き合った人は今までひとりもいない事を、九重くんに話した。

私の言葉を何も云わずに最後まで訊いていた九重くんはフッと笑みを零した。

「な、なんで笑うの?そんなに可笑しい?私」
「あぁ、違うよ。佐東さんの事を笑ったんじゃなくて、佐東さんをフッた男たちを馬鹿にした笑い」
「…え」

九重くんの云っている事がよく解らなくて首を傾げた。

「勿体ない事してんなぁーって、馬鹿な男ばっかりで笑える」
「…」
「確かに佐東さん、セックス下手だね」
「なっ!」

面と向かって云われて今までの厭な記憶が一気に押し寄せて来た。

(こ、こんな子ども大人の九重くんにまで云われるなんてっ)

盛大なショックを受けながらも九重くんが続けた言葉に耳を疑った。

「だけど佐東さんって鍛え甲斐のある体なんだよなぁ」
「…へ」
「セックスの本当の気持ち良さを知らないっていうか、今まで相手にして来た男が下手くそっていうか」
「…」
「数をこなして来たわりにぎこちないっていうか、開発されていないっていうか」
「…」
「佐東さんの持っている素質を上手く引き出せていないんだよなぁ」
「…」

(九重…くん?)

彼がなんの講義をしているのか解らない。

ただ、呆気に取られている私に語り掛ける言葉はどれも私に厭な気持ちを与えなかった。

「俺が教えてあげる」
「…」
「佐東さんに気持ちのいいセックス」
「…」
「容姿端麗の佐東さんがセックス上手になったら益々いい女になっちゃうね」
「…」
「で、そんないい女は俺の彼女」
「…九重くん」

(先刻からドキドキが止まらない)

なんだか急に雰囲気が変わった九重くんに対して胸が高鳴る。


今まで私の方が優位だと思っていた。

職歴の長さだって背の高さだって…

其れに恋愛に関しても告白された方が偉いんだって思っていた。

だけど

「ねぇ、杏奈って呼んでいい?」
「…」
「ふたりの時だけでもいいから」
「……うん」


いつの間にか私と九重くんの関係は逆転していたのだった。

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