九重くんに引っ張られるまま辿り着いた場所はよく知った処だった。

 
「ちょ、ちょっと!九重くんっ」
「…」

私がどんなに言葉を掛けても九重くんは進むのを止めない。

(こんな…ラブホになんて)

いかがわしさを連想させるこの場所に九重くんがいるイメージは余りにも不似合い過ぎた。


「九重くん!子どもがこんな処入っちゃダメでしょう!」

建物のロビーに入った処で思わず云ってしまった言葉で九重くんはようやく歩くのを止めた。

そして私の手を掴んだまま徐に振り返った。

(なっ)

ゆっくり向けられた其の顔を見た瞬間、ゾクッとした。

其処には私が知っている爽やかな純情少年風の表情なんて一切ない、年相応の男としての険しさが張り付いていた。


「誰が子どもだって」
「…」
「いい加減子ども扱い、止めてくれませんか」
「…こ、九重」
「俺、本気ですから」
「!」

(僕から俺になっている)

変わったのは其れだけじゃなかった。

いつも訊いて知っている声じゃなかった。

顏だって、いつもの知っている顔じゃなかった。


(これは…誰?)


ただ私との身長差だけは変わらず其処に存在していた。


呆気に取られている間に気が付けば私は九重くんとラブホの一室にいた。

「先にシャワー浴びますか」
「………へ」

やっと我に返った私はジャケットを脱ぎ、ネクタイを外しシャツのボタンに手を掛けている九重くんの姿を凝視した。

「其れとも一緒に入りますか?」
「~~~な、ななっ」

子どもみたいな顔をしている癖に其の手慣れたような言葉と仕草に一気に慌てふためいた。

(何、この流れるような手慣れた感はっ!)

「佐東さん」
「こ、九重くん、あなた」
「子どもじゃないですよ」
「っ」

見上げる様に覗き込まれた視線が何ともいえない色香を醸し出していてあっという間に顔に熱が集まった。

「子どもはこんな処に入りません」
「…あっ」

グイッと手を引っ張られ、傍にあったベッドに座らされた。


其処で私の視線は見上げた先にあった九重くんの其れと重なった。

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