九重くんの歓迎会は二時間ほどで終了した。


「んじゃあまた月曜日にねぇ~」
「課長、足元気を付けてください」

次々と帰って行くみんなを見送りながら、最後タクシーに乗る課長に声を掛けた。

「あぁ、大丈~夫!ってか九重くん、くれぐれも佐東さん、お家まで送ってってくださいよぉ~」
「はい、お任せください!」
「じゃあね~おやすみぃ」
「おやすみなさい」
「お疲れ様です」

課長を乗せたタクシーが走り去るのを私と九重くんは見送った。


「ふぅ…」

ほろ酔い気分の中、隣にいた九重くんに視線を向けた。

「じゃあ九重くん、おやすみなさい」
「えっ、おやすみなさいってなんですか」

駅に向かって歩き出そうとした処、バッと行く手を阻まれた。

「なんですかって、今日はこれで解散という事で」
「ひとりで帰るつもりですか?」
「つもりです」
「ダメですよ、僕、課長に佐東さんを家まで送って行けって云われていますから」
「あぁ、大丈夫。酔っていないからひとりで帰れます」


課長を始め、おじさんたちの思惑は見え見えだった。

既にお酒の席で解り易い程にお膳立てされて

(あぁ、みんな私と九重くんをくっつけたいんだろうな)

というのが事ある毎に解ってしまっていた。

九重くんが来る前の飲み会で誰かが私を家まで送って行くなんて事がなかったから余計に解るのだ。

「ダメですよ!送ります、絶対に!」
「…」

ムキになって叫ぶ九重くんが可愛らしくて思わず笑みが零れた。

「な、なんで笑っているんですか」
「あぁ、ごめんなさい。なんだか必死だったから」
「…」
「本当に大丈夫だから。其れよりも九重くんの方が心配だわ」
「心配って」
「だってこんな時間にこんな繁華街を九重くんみたいな子ども顔した子が彷徨っていたら悪い大人に引っかかるんじゃないかって」
「…」
「あ、だったら私が九重くんを家まで送らなきゃいけないのかな」

冗談混じりでそう云った瞬間、私の手がガシッと掴まれた。

「え」
「──いい加減にしてください」

私の手を取った九重くんは今まで見た事がない顔をして私を引っ張った。

「ちょ、ちょっと」

私がどんなに抵抗しても掴んでいる九重くんの手はビクともしなくて、引っ張られるまま九重くんの後をついて行くしかなかったのだった。

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