──社内恋愛は嫌いだ 



『あんた、よくもぬけぬけと人の彼氏寝取ったわね』


付き合っている人がいたなんて知らなかった


『この泥棒猫!顔だけの女のくせにいい気になるんじゃないわよ』


そんなのあなたに云われなくたって知っている


『あぁ、でもやっぱりあたしの方があんたよりいいって戻って来たから赦してあげたのよ』


あんな嘘つき男、こっちから願い下げよ!




「佐東さん?」
「!」

軽く肩を揺すられ我に返った。

気が付けば課行きつけのいつもの居酒屋で酒盛りが繰り広げられていた。

「もう酔っちゃいましたか?」
「…いえ…酔っていません」

心配そうに私の顔を覗き込む九重くんの顔を見たら何故かホッと安堵の気持ちが湧いた。

(なんだろう…子ども子どもしているから安心する)


九重くんの歓迎会と称した飲み会が始まってから一時間ほどして、課長を始めおじさん社員たちが九重くんに自分たちが入社した頃の昔話を始め、其れを訊いている内に何となく自分が入社したての頃を思い出してしまっていた。


入社した当初、私は受付に籍を置いていた。

会社のロビーで来客を出迎え案内する仕事。

私の顔だけで与えられた仕事だったかも知れないけれど、私は私なりに受付という仕事に真摯に向き合っていた。

勿論そういった場所は出逢いも多くて、付き合う男のカウンター数は増して行った。

そんな男たちの中には当然会社の人もいて、告白されればなんの躊躇いもなく付き合った。

ただ、彼女がいる男だけは決して付き合わないというのが私の決まり事だった。

だけど相手が『彼女?いないよ。だから君に声掛けたんじゃない』と云えば、其れを私は信じるしかなかった。

好きになるために寝て、そして何故かあっという間に厭きられて別れ話をされる。

そんな相手の中に同じ受付嬢だった先輩社員の彼氏がいて、全てを知られた時修羅場になった。

其れをきっかけに私は受付業務から外され、おじさんばかりが集まっている会社の中でも地味な場所に位置する庶務課に異動になったのだ。



(うんざりだわ、社内恋愛だなんて)

会社内で禁止されている訳ではないけれど、私にとっては災いしか呼ばないだろう狭い世界での恋愛はもうしないと決めていたのだった。

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