「おぉーい、アーリァ!」
「…」

其の日もいつもの勉強を終え、自室に向かうために歩いていた廊下から声を掛けられた。

フェルはある部屋の前でブンブンと腕を振っていた。


「こっちこっち!」
「フェル、どうしたの」

私はフェルの元へ行き、開け放たれている扉から見えた室内の様子に驚いた。

「今引っ越し中なんだ」
「…引っ越し?」
「そう、おれ、今日からこの城に住む事になったんだ」
「…え」

フェルの言葉にキョトンとしてしまう。

「つー訳でこれからよろしくな」
「…どういう事?どうしてフェルが城に住むなんて事に」
「騎士になるための修行をするんだ」
「騎士?」


騎士というのは今現在王室に置かれている王室全般を警備する機関の役職名だ。

昔々、まだメガロティアに存在する国々がいがみ合い、争いを続けていた時代に戦で敵と戦うために強化訓練された精鋭部隊に所属した者を騎士と呼称していた。

主に大きな4ヵ国が和平宣言を果たし、平和になった今では其の組織は昔の流れを残しつつ、戦で戦うのではなく王家の人間や城の治安を護るために存続していた。

規模の大きさこそ違うが、やはり現在も騎士という称号は形を変え使われ続けていたのだった。


「父さんから騎士になれって云われてさ。最初は驚いたけど、なんか騎士っておれに向いている様な気がしてさ、其の気になった」
「…」
「おれ、勉強はからっきしだけど力だったら誰にも負けない!だったらこの力を使ってアーリァを護ってやろうと思ってさ」
「…」
「騎士団の一員としてこれから修行するってんで城に住み込みになったんだ」
「…そうなんだ。頑張ってね」
「おう、任せておけ!アーリァの事はおれが護ってやっから」
「…うん」

私はフェルに頭を下げて挨拶をした。

誰であろう、国の為、王家の為に尽くそうとしている人は敬わなくてはならない。

其れはちいさな時から叩き込まれた王たる素養のひとつだ。

「あぁ、おれ頑張るからアーリァも立派な王様になるために頑張れよ!」
「うん」

やんちゃで悪戯好きのフェルが少しだけ頼もしく見えた───そんな出来事だった。

Schwarz Mythos
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