「す、すまない…怒鳴ってしまって」
「…いえ、いいんです。あなたの事ですから何か考えがあってのお言葉なのでしょう?」
「…メナム」
「理由は…教えてくださらないんですか?」
「…」

云えない──

(メナムには契約の事を云えない)

夢の中で交わした契約だの、夢を見たから妊娠したのだと──そんな不確かな事を告げてメナムの心の負担になるような事は避けたかった。


「…あなた」

そっと寄り添うメナムが愛おしくて堪らない。

だからこそ自らが哀しみを与える事など出来なかった。


「──本当は婿候補を…集めたいと云いたかった」
「婿候補?」

今、語りながら必死で作り話を紡いで行った。

「まだ恋を知らぬ内から、アメリアにとって良いと思われる婿候補を数名集め、今から顔合わせをしておきたいと思ったのだ」
「…」
「どの相手と恋をしてもいい、好条件の者を選りすぐりアメリアの傍に置く。アメリアが大人へと成長する頃には其の中のひとりと愛が芽生える事になるのではないかと…そうなってくれればいいと思っている」
「アメリアがどのお相手を選んでもあなたは文句を云わない?」
「あぁ、アメリアが心から愛した相手ならばおれは何も文句を云わない」
「…そういう事、ですか」
「どう、だろうか」

(即席で作った云い訳にしてはよい出来だと思ったのだか)

ジッとメナムを見つめていると、やがてメナムは静かに微笑んだ。

「いいと思います」
「!」
「お城の中で過ごすあの子にはあまりにも出逢いが少な過ぎます。あなたがこれぞと思うお相手なら安心して近くに置けますものね」
「そ、そうか」

少しだけ後ろめたい気持ちがあったけれどこれで実行に移せると思った。

(そうだ、先にアメリアの相手を見つけてしまえばいい)

夢の者がいつおれやアメリアの前に現れるのかは解らないけれど、早々にアメリアに相手を与えてしまえば契約は仕方がなく不履行となるだろう。


(何が何でも護ってみせる!)


──そうしてアメリアの知らぬ処で彼女の運命の歯車は静かに動き出したのだった


Schwarz Mythos
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