今からほんの二時間前、私は龍からの告白を断った。 

今は龍の事を本当の意味で好きじゃないから付き合えないと。

そう云った私の言葉を受けて龍はしばし固まってしまったけれど、直ぐに其の顔に生気が戻って来た。

「じゃあ、歌也ちゃんが俺の事、好きになったら付き合ってくれるって事?」
「え…あ…あ~ま、まぁ…そういう事、になるのかなぁ」
「…そう」

そう云ったきり龍は黙ってしまった。

(なんだろう、やっぱり告白した事、撤回するのかな)

性急に交際を迫っていた龍にとっては大きく目論見が外れた流れになっていた。

もしかして其処で諦めてしまえる程度の好意だったのかと少し心配になっていると

「直ぐになるよ」
「…え」
「歌也ちゃん、俺の事、直ぐに好きになるから」
「…」
「まぁ、14年待ったんだ。今更一日二日延びようと大差ないからね」
「あ、あのねぇ…そんな一日二日で好きになるとは──」
「なるよ、直ぐに」
「っ!」

其の自信は何処から来るのか──と云い返したかったけれど、妙な迫力のある龍の言葉に一瞬喉が詰まってしまい言葉が発せられなくなった。

(何よ…何なのよ)

私の好み其のままの顔に体、そして嘘臭いクールな面と本音の人懐っこさのギャップを見せつけられただけで既に私の心は大きく揺れ動いてしまっていた。

(好きになるって…)

人を好きになるってそんなの、一日二日でどうにかなる訳じゃない。


──そう、思っていたのだけれど…



「歌也ちゃん、メイプルシロップって何処にあるの?」
「あぁ、其れなら上の棚に」
「此処?」

背伸びして棚を開けようとした私の後ろに立って龍がひょいっと棚を開けて中からシロップの瓶を取った。

其の仕草がまるで後ろから抱きすくめられている様な形になってドキッとした。

(背丈の差があり過ぎるっ)

おおよそ20㎝以上の身長差はときめく要素がふんだんにあった。

私がほんのり顔を赤くしていると瓶を手にした龍が透かさず

「好きになった?」

とにっこり微笑んだ。

「っ! な、ならないよ、こんな事で」
「あっそ、残念」
「~~~」

全然残念そうじゃない顔をして龍はキッチンを出て行った。

(なんか…性格悪くなっていない?)

年下の龍にいちいち翻弄されている私は動揺しまくっていたのだった。

王子様の作り方
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