其れを目の前の彼に見られたくなくて、私は慌ててソファから立ち上がった。

「歌也ちゃん!」

彼が私を呼ぶ声を聞きながらリビングを飛び出した。


 バタンッと大きな音を立てて部屋のドアが閉まった。

「ふっ…ぅ」

真っ暗な部屋に私の抑えた嗚咽が響いた。

(最初から…嘘をつかれていた)

アイドルになるために北海道から出て来た彼を応援したいと思った。

其れと同時に、この家で彼を見た瞬間、理想の王子様が現れたと思った。

だけど仄かに疼いた心は彼がゲイだという事で消えてしまった。

(…でもあれは…私が勝手に思い込んだ事だった)


『…俺、ゲイだなんてひと言も云っていない』


確かに

彼は自分がゲイだとは一度も云っていなかった。

(其れだけは…本当だ)

ほんの少し酔った頭の今の私には其れだけしか考えられなかったのだった。












『たっだいまぁーあーお腹いっぱい~』
『こら裕翔、靴はきちんと揃えてから上がる』 
『もぉー浬はいちいち煩い!僕のお母さんかってーの』
『母親云々の話じゃない、常識だ』
『まぁまぁふたりとも、夜も遅いんだから静かにしろよ。歌也、もう寝ているだろうし』
『あ、そっかー歌也ちゃんに怒られる~』
『すみません、武也さん』
『ん?でもリビング明かり点いているな。まだ起きているのか?』


そんな話声が徐々にリビングに近づいて来て、そしてカチャッとドアが開けられた瞬間声がより身近に届いた。

「あれぇ龍ちゃん?」
「…」

ソファに座り込んでいる俺を見た裕翔が声を上げた。

「龍ノ介さん、まだ起きていたんですか?」

続けて声を掛けた浬の言葉にも反応出来なかった。

でも

「──おい、どうした龍」
「…」

武也さんはいち早く俺の異変に気がつき、傍に寄って来た。

「おい、龍!」
「……らわれた」
「え」
「嫌…われた…歌也ちゃんに」

強く肩を揺さぶられ、ようやく口に出せたのは其れだけだった。

王子様の作り方
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