「えぇ、付き合う事になった?!」
「うん」
「彼氏に別れてくれって云われてフラれたくせに、其の日の内に違う男と?」
「うん」
「しかも其れが…SOULAGERのイケメン店長だって?!」
「うん」
「信じらんない!…いや、美兎ならあり得るかも知れないけど…けど…」
「初めてなんだよ」
「は?」
「私から告白して付き合ってもらうの、初めてなの」
「…美兎から告ったの?」
「うん」
「うっそ」
「本当」

店長と付き合う事になった翌日、私は友だちの芳香が勤めるデパートに買い物がてら来ていた。

其のついでに芳香が担当している化粧品売り場に赴き、昨日あった事を簡単に話した。

「其れって、ちゃんと美兎が30歳だって云った?見かけは未成年みたいだけど実年齢は30だって」
「まだ29だよ、誕生日来ていないから」
「大差ないでしょう、29も30も!」
「あ、芳香、前と云っている事違う。芳香だって30になる前は『20代と30代は全然違うんだからね』って怒っていたくせに」
「其れは其れ、これはこれ!」
「何、其れ」

似た者同士の私たちは一旦話が始まるといつの間にかエスカレートしてしまい、すぐに他のスタッフの人に注意されてしまった。

仕事が終わってから話の続きをするべく約束を取り付けながら芳香は仕事に戻って行った。

私は化粧品売り場を後にして、ブラブラと洋服や靴を見たりしていた。

そして先刻までの芳香の反応を思い返していた。

(芳香が驚くのも無理ないよね)

高校の時から友だちの芳香は私の男性遍歴を知っている。

芳香と一緒にいる時にも何度も告白されて、其の場で付き合う事を了承していた。

でも其の全てが受け身の恋だった。

付き合うってもっと愉しいものなんだと思っていたのに、どんな人と付き合ってもちっとも愉しくなくて、次第に愛想笑いする事も厭になった。

そうしてお決まりのように一方的に別れを切り出す相手をただ黙って見送るだけの私だった。

別れを切り出された其の瞬間は寂しいと思った。

いつも傍にいてくれる人がいなくなるのは寂しくて、其の時は泣きたくなる気持ちが湧いた。

だけどまた直ぐに告白される。

そうしたら寂しかったという気持ちは瞬く間に無くなって、この人は私の傍にいてくれるのだと思ったら大した考えもなく付き合う事を了承していた。

──其の繰り返しだった

年齢を重ねる毎に其の頻度は少なくなって行き、寂しいと思う期間が長くなるようになった。

だけど今度の恋は今までとは違う。

私が初めて好きになって付き合う事になった。

初めて自分から告白をして付き合う恋愛を始めたのだ。

(…ふふっ)

何故か今まで生きて来た人生の中で、今が一番愉しいと思ってしまっている私なのだった。

SOULAGER
★ランキングサイトに参加しています。
其々1ポチずついただけると執筆の糧になります。

恋愛ランキング
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村