『店長さんを好きになったからです』

気が付けば馬鹿正直にそう答えていた。

「…」

私の告白を訊いた店長は呆気に取られていたけれど、大した動揺を見せずに「此処じゃなんだから」と云って店内に入る様に促した。

(流石…告白なんて慣れているって感じ)

ある種、自分にも身に覚えのある事で其の態度に大した落胆はなかった。


カウンター席に案内されて、座った私に店長はミルクティーを出してくれた。

「…ミルクティー」
「好きなんでしょう?4杯も飲んだくらいに」
「!」

其の言葉にハッとした。

「あの、其れって…」
「思い出した。君、フラれていた子だ」
「っ」

今しがたまで忘れてしまっていた事を思い出された。

(そうだ、私、今日フラれたんだった)

「彼氏にフラれた其の日の内に違う男に告白するなんて凄いね」

其の時、初めてにこやかな顔でも驚いた顔でもない、何ともいえない皮肉めいた表情をした店長を見た。

「た、確かにフラれましたけど…でも私は別に好きでもなかったっていうか…告白されたから付き合っていただけの人で…だから別になんとも──」
「泣きそうな顔していたくせに」
「!」

ふいに目元を押された。

店長の親指の腹が私の目元を、まるで涙をぬぐう様な仕草でスライドさせた。

「泣くのを堪えている様な…目を真っ赤に充血させていた」
「…」

其の言葉に、其の仕草に胸がジンジンと痛んだ。

「悲しかったんでしょ?」
「…」
「彼氏の事が好きだったからフラれて悲しかった」
「…」
「そんな弱っている処に俺の営業用の優しい接客を受けて勘違いした──って処でしょう?」
「…」

(営業用…優しい接客…)

店長が云っている事は正しい。

おおまかな流れは間違っていない。


だけど其れは


「違います」
「え」
「彼の事が好きでフラれて悲しかったというのは間違いです」
「そうなの?」
「そうです。私が泣きそうに悲しかったのは、またひとりになるのかと思ったから」
「…」
「傍にいてくれる人がいなくなるのかと思ったら寂しくて悲しかった」
「…」
「其れと、あなたの事を好きだと云ったのは、あなたに運命的なものを感じたから」
「は?」
「あなたは私の運命の人です!」
「…」

(あ…また)

店長のにこやかな顔、驚いた顔、皮肉っぽい顔以外の、新しい表情を見たと思った。

SOULAGER
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