「どうだ」
「解りました」
「いいのか?」
「はい」

よく解らない、おかしなルールだなと思ったけれど、其れもやっぱり私にとっては特別不都合が生じる事ではなかったので直ぐに了承した。

「日曜日だぞ?デートとかあったりしたら都合悪いんじゃないのか?」
「…デート」

大家さんの言葉で思い出したくもない事を思い出してしまってまた気持ちがへこんだ。

(する相手がいたら今、此処にいないんですけど)

「おい、どうした」
「はは…デート…だなんて…ありません」
「…」
「私…フラれたばかり…ですから…」
「えーっと…もしかして俺、なんか傷口バックリ開いて塩塗り込んじまったか?」
「は…ははっ…ははははははっ~~」
「おい、しっかりしろ!」

なんだか急に泣きたくなったのに笑ってしまうばかりで、大家さんの遠巻きな慰めの言葉も私には届かなかったのだった。



「とりあえず…あんたの部屋は二階の一番奥」
「はい、ありがとうございます」

やっと落ち着いた私は大家さんに案内されて貸してもらった部屋に辿り着いた。

「其れで来て早々悪いが、よかったら今日からでも夕食、作ってくれないか?」
「はい、いいですよ」
「食材は台所の冷蔵庫の中に入っているから。あるものなら何でも使ってくれて構わない」
「解りました」
「んじゃあよろしく」

そう云って大家さんは私を部屋に残して階下に降りて行った。


「…はぁ」

案内された和室でひとりになった私は改めて冷静になって今日一日にあった出来事を反芻する。

(まさか朝、実家を出た時にはこんな展開になるとは思わなかったなぁ)

本当なら今頃は先輩へのサプライズが成功して、一緒に住む記念に美味しいものでも食べに行っていたかも知れない。

(其れがどうだろう、この状況は)

最悪の事を考えていたよりはうんと恵まれた状況に至ってはいるけれど、やっぱり失ったばかりの恋を綺麗さっぱり忘れる事はまだ出来そうになかったのだった。

タタリ荘のモノノケ
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