ユラユラと体が揺れている感覚がした。 



『…や』


(ん…)


『…か…さん』


(んん…)



「歌也さん」


「…!」


耳元で聞こえた低い声に意識は急上昇した。

ガバッと起き上がると其処には少し怪訝そうな顔をした龍ノ介くんがいた。

「…ソファで寝ていると風邪、ひきますよ」
「あ…」

徐々に状況が解って来てはぁとため息をついた。

大学から帰って来て洗濯物を取り込んで畳んでいた時、不意に涼花から訊かされた貴志山くんの名前が思い出したくもない記憶を呼び起こし、其れを振り切るかのようにうたた寝してしまっていた。

(…厭な夢…見たかも)

起こされる寸前まで何かの夢を見ていた気がしたけれど、其の内容は時間が経つにつれて思い出せなくなっていた。

「…きしやまって」

ソファから起き上がり畳んであった洗濯物を手にしようとした時、龍ノ介くんが何かを呟いた。

「え、何?」
「……何も」
「そう?…あ、もうこんな時間だ、晩ご飯の支度しなきゃ」

私は慌ててリビングから飛び出した。

(あぁ~不覚!恥ずかしいっ)

時間が経つにつれて、今あった出来事に羞恥を覚えた。

(みんなが行き来するリビングのソファで寝るなんて…)

しかも其れを入って来たばかりの龍ノ介くんに見られてしまった。

(みっともない処みせちゃったな)

普段なら絶対にしないミスをした事に少し落ち込んだ。

(…其れだけ動揺していたって事…なのかな)

自分の中ではもう吹っ切れていた事だと思っていた。

だけど実際は其の名前を訊いただけでこんなにも狼狽える自分がいる事を知ってもう少し落ち込んだ。

(こんなんじゃ貴志山くんが芸能人としてテレビとかに出まくる様になったらどうなるの)

涼花が云っていた、イベントでコスプレしていた──というのは、どういう状況なのかと思った。

涼花が参加していたイベントというのはいわゆるコミケと呼ばれているコミックマーケットの事。

(其処でコスプレしていた?)

既に芸能人として何か仕事をしていたのだろうか──?

(……って!)

気が付けばまた貴志山くんの事ばかりを考えてしまっている。

(もう!涼花の云う通りになるじゃないっ)


『なぁに、まーだ未練タラタラなのぉ?』


そんな訳ないと思いながらも、今のこの状況では胸を張って否定出来ないのかなと、またため息が漏れたのだった。

王子様の作り方
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