「そういえばこの間、ゲス山見かけたよぉ」
「え」

急に涼花が話を変え、飛び出た名前にドキッとした。

「参加したイベントでコスプレしていた」
「…」
「目が合った途端こっちに来そうだったから逃げたんだけどぉ」
「…」
「お~い、歌也ぁ」
「……何」
「なぁに、まーだ未練タラタラなのぉ?」
「…」

涼花の問い掛けに強く否定的な答えが出来ない私は、暗に其れを認めているみたいだった。

涼花が口にした『ゲス山』とは、私が高校生の時にほんの短い期間付き合っていた彼氏で本名、貴志山 優(キシヤマ スグル)の事だ。

私にとっては初めての彼氏で初めての──

「歌也ぁ?」
「…ううん、なんでもない」
「なんでもないって顔じゃないよ、まだ根に持っているんだねぇ」
「そんなんじゃ…」
「いや、持っていいよ、あんなゲス野郎!あ~イベント会場じゃなかったら蹴り飛ばしてやったのに」
「もう…涼花ったら」

涼花の気持ちが少し嬉しくてちょっとだけ気分が浮上した。

私同様、同級生だった貴志山くんの事をよく知る涼花は、私が貴志山くんにフラれた事を一緒になって怒ってくれた。

(二年前の事なんだけどな…まだ根に持っているのかな、私)


もう二年?


まだ二年?



本当に好きだったからこそ、其の気持ちを踏みにじられたのが哀しくて悔しくて…

私がフラれた理由を知っている涼花は其れ以来貴志山くんの事を『ゲス山』と皮肉を込めて呼んでいるのだった。


「歌也、合コンしよう!」
「……へ?」

少し呆けていた私の頭に涼花がいきなり発した言葉がビシュッと突き刺さった。

「ゲスい男を忘れるには新しい恋をするしかないんだよぉ!」
「えぇ~」
「今まで黙っていたけどね、歌也、勿体な過ぎ!あんなゲス山の事で燻っていて折角の女盛りに愉しい経験ひとつもしないなんて!」
「だ、だからって合コンって…」
「だって放っておいたら歌也、自分から動かないでしょう?!こうなったらわたしの使える武器を駆使して歌也に相応しい男を見繕ってあげる!」
「そんなのしなくていいよ。相手位自分で見つけるから」
「煩い!今までそうやって断って来たけど全然見つけていないじゃない!というか見つけようとしていない!」
「そ、其れはぁ…いいなって思う人がいないだけで…」


嘘。


(いいなと思った人はいたけれど、みんな恋愛対象が同性だという残念さでいい加減辟易しているんだよね)

そんな特殊な環境下にいる私だからこそ、初めて出来た彼氏との破局が未だに根深く燻っているのかも知れない。

「いい、もう何も云わないで!合コン、するからね!」
「~~~」

こうなった涼花を止める事が出来ないと、幼馴染みの私には充分解っていたのだった。

王子様の作り方
★ランキングサイトに参加しています。
其々1ポチずついただけると執筆の糧になります。

恋愛ランキング
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村