父と私、そしてアイドルユニットとしてデビューを目指す男子三人との共同生活が始まってから数日が経っていた。


「じゃあ行って来ま~す」
「行ってまいります」
「はい、気を付けてね」

高校生の裕翔くんと浬くんを玄関まで見送ってリビングに戻って来た。

そしてソファに座ってボーッとテレビを観ている龍ノ介くんに声を掛けた。

「龍之介くん、悪いんだけどお父さん起こして来てくれる?」
「…ん」

私の声掛けにのっそり立ち上がってリビングを出て行った。

(う~ん…相変わらずユッタリしているなぁ)

一緒に生活を始めてから少しずつ解って来た龍ノ介くんの生態。

彼は彼自身が持つ独特の時間軸の中で生きている。

(最初の頃は単に新しい環境に緊張してぎこちないのかなと思っていたけれど)

八柳龍ノ介という人は驚くほどに覇気のない無機質人間だった。

一応の協調性はあるみたいだけれど、積極的に人と関わろうとしない。

愛想笑いなどの喜怒哀楽の表情が乏しく、感情が読み取りにくい。

話し掛けられれば答えるけれど自分から話題を振ったり、自身の意見や気持ちを云う事がない。

(流石ロシアとのハーフなだけに見かけや佇まいがまさに氷の王子様って感じ)

彼にはそんな異名がピッタリ当てはまるのだった。


でも…


(そんなんでよくアイドルになろうと思ったわね)

おおよそ彼には似つかわしくないだろう華やかな芸能界に飛び込もうという事態が私には不思議だった。

確かに見た目だけは其の華やかな世界には相応しいものだった。

けれど彼の性格上、好んで其の手に世界に飛び込みたいという意志というか気概が今ひとつ感じられないのだ。

(まぁ、何か理由があるのかも知れないから余計な事を云ったり訊いたりはしないけれど)

そんな事を考えながら朝食の後片づけをしていると中々いい時間になっていた。

「いけない、講義に遅れちゃう」

私は慌ててリビングから出て、自分の部屋に向かった。


途中龍ノ介くんと寝起きの父に会った。

「お父さん、朝ご飯置いてあるから其れ食べて行ってね」
「お~ぅ」
「もう、ちゃんとしてよ。今日はテレビ局で打ち合わせだって云っていたでしょう?時間気にしてよ」
「おぉう、大丈夫だぁ~」

(なんか心配だな)

目を瞑りながらちゃんと訊いているかどうか怪しくなった私は龍ノ介くんに向けて云った。

「龍ノ介くん、お父さんの事頼んでいい?ちゃんと行く様にフォローして」
「…ん」

いつも通りそう短く頷かれ、若干の心配はありつつも私は急いで家を出たのだった。

王子様の作り方
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