「裕翔、浬、龍ノ介、明日からのスケジュールに関するミーティング始めるから応接間に来て」
「ほーい」
「はい」
「…はい」


夕食後、父が三人を集めて一階の事務所に移動して行った。

そんな様子を私は食器を片付けながら眺めていた。

(本当にアイドルとして芸能活動するんだなぁ)

なまじ身近に接している人が芸能人になるんだという感覚が不思議だ。

まぁ父が元アイドルだったという環境で育って来たから戸惑うという事はなかったけれど。

其れにやっぱりみんなゲイだという肩書は私から憧れやときめきを奪っている。

(彼らが普通にノーマルだったらきっと)


───ん?


(だったら…何?)


「…あの」
「!」

考え事をしていた頭に入り込んだ声にドキッとした。

慌てて振り向くと其処には龍ノ介くんが立っていた。

「武也さんがお茶、もらって来てと」
「あ、あぁ、お茶ね。うん、了解」

若干の焦りを感じながらもキッチンに立ちお茶の準備を始める。

「…」
「…えーっと、淹れたら私が持って行くから」

何故か私のする事を其の場に立ったままジッと見ている龍ノ介くんに声を掛けた。

「…覚えている?」
「え」

急に話し掛けられドキッとした。

「俺の事…覚えている?」
「あ…あの」

少しくすんだ青い色をした目がジッと私を見ていて何故か胸が高鳴った。

(覚えているって…多分子どもの時の事だよね)

母から訊かされた龍之介くんとの事。

昔、幼い時にたった一度だけ逢ったという事を踏まえて、彼からの問い掛けに答える言葉に少し迷った。

でも

(嘘…ついても仕方がないからなぁ)

「俺の事」
「ごめんね…母から訊かされるまで全然知らなくて」
「…」
「訊いてからも思い出そうと思っているんだけど…全然思い出せなくて」
「…」

もしかしたら嘘でも『うん、覚えているよ』と云った方が彼との関係のぎこちなさは和らいだのかも知れないけれど…

「ごめんね」
「…いい」
「え」
「覚えていないのなら…いい」
「あ」

其れだけを云うと龍ノ介くんは其の場から立ち去って行った。


「…なんだったの」

龍ノ介くんの何か云いたげな表情が妙に心に残った私だった。

王子様の作り方
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