「Mr.サージェスト?!」

私は驚き、思わず彼の肩に手を置いた。

すると私の其の手を握り締めながらサージェストは口を開いた。


「そ、んなにも…僕の事を…」
「───え」
「君はずっと…ずっと僕の事を…想ってくれていたって云うのかい?」
「……あ、あの…?」
「ごめんね…結ちゃん」
「?!」

其の瞬間、私の中の気持ちが十一年前に引き戻された。


『結ちゃん』──其れはあの彼が私を呼ぶ時の云い方だった。


「な…なっ…あ、なた…」
「…騙していてごめんね…僕は…鈴木祐輔だよ」
「…え……え、え、えぇぇぇぇぇぇ?!」


なんという驚き


なんという展開



──こんなご都合主義みたいな事ってあるのだろうか?



「結ちゃん…本当にごめん。今先刻の事といい、十一年前の事も含めて心から謝罪します」
「あ、あの…祐輔、さん…え?本当にあの祐輔さん…なの?」
「そうだよ、正真正銘僕があの鈴木祐輔だよ」
「…」
「ははっ、信じられないよね。ご覧の通り見た目も社会的立場もあの頃とは違い過ぎているからね」
「なんで…どうして…」
「きちんと説明するね。十一年前突然結ちゃんの前から姿を消した理由」
「…はい」

余りにも突然の展開に驚きが大半を占めていた胸中だったけれど、其のほんの片隅には十一年前のあの時の恋しい気持ちが張り付いていた。



「実は僕、アメリカのある有名企業の創始者の隠し子だったんだ」
「……へ?」

話の切り出しが余りにも衝撃的で思わず変な声が出てしまった。

「ははっ、そうだよね変だよね、あの時の僕からは考えられない出自だよね。でも本当なんだ。学生の頃母がアメリカに留学していた時に父と知り合って、父が何者であるか知らない内に恋に落ちてそして僕を身籠った」

(わぁ…まるで映画みたいな話)

其れは女性なら誰もが憧れるシンデレラストーリーだった。

でも

「だけど母は父の本当の姿を知って父の元から逃げ出したんだ」
「え」
「其の時の父には既に妻も子どももいた。つまり母は知らない間に愛人という身分に置かれていたんだ」
「!」
「まぁ、よくある話かも知れないね。でも母にとっては純粋に恋した結果が道ならぬ恋だったと知った時の衝撃は大きくて…僕を身籠ったまま日本に帰国してしまったんだ」
「…」

一瞬でも彼のお母さんの恋愛を羨ましいと思ってしまった事を後悔した。

「其れからはお決まりのシングルマザーストーリーだよ。母は騙されたと知っても愛した男の子どもである僕を生んで育ててくれた。ただ…僕の容姿はアメリカ人の血の方が色濃く出てしまって、其れは成長する毎に父に似たモノになっていった」
「…」
「そんな僕を見る度に母は辛そうな顔をした。きっと僕に父の面影を見ているのだろうと思ったから。だから僕は母の為に外見を変えようと必死になった」
「え」
「手っ取り早く体型を変えた。細かった体を食べる事で太らせた。そして髪を黒くして目には黒いコンタクトをはめた」
「…」
「母はそんな事をするなと云ったけれど、僕の中ではそうする事がベストだと…其の時はそう思い込んでいたんだ」
「…祐輔さん」

其処まで話を訊いて私は何となく理解した。

あの時

十一年前、私が彼と出逢った時の容姿は、彼が必死になって作り上げたお母さんに対する思いやりの結果だったのだと。

(そう…だったの)

なんて優しい人なのだろうと思った。

きっとお母さんを大切に想ったからこそあの姿だったのだと思うと、あの時の彼が一層愛おしくなって仕方がなかった。

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