ガンガンと痛む頭。


「…んっ」


朦朧とした意識が徐々に覚醒し出した。


「……ぇ」

目に飛び込んで来たのは天蓋だった。

「…此処」

「目を覚まされましたか?」

「!」

いきなり耳に入った女性の声に驚いた。

視線を声のした方に向けると

「ご気分は悪くないですか?」
「……あ、あの」

私が寝かされてるベッドの脇に座っていたのはとても美しい女性だった。

ほっそりした体に黒いパンツスーツを着込んだストレートの長い髪の女性。

「まだしばらく横になっていて下さい。薬を使って眠っていただいたのでまだ意識がはっきりしない筈です」
「…薬?…意識」

其処で徐々に意識がなくなる前の事が思い出されて来た。

(そうだ、公園のベンチで座っていたら急に目と口に何かが当てられて)

甘い匂いがしたと思った。

驚いて其の拘束から逃れようとどんなにもがいても其れは外れなくて…

どれだけ時間が経ったのかは解らなかったけれど、やがて眠る様に意識を手放して行ったのだった。


「起き上がれるようになりましたらお食事にしましょう。お腹が減りましたでしょう?」
「なんで…此処…どうして」

云いたい事が上手く口をついて出てこない。

どうしていきなりこんな目に遭ったのか?

此処は何処であなたは誰なのか?

訊きたい事は沢山あった。


「訳も解らずこんな状況になっては不安でしょうね。でもご安心ください。あなた様に危害は一切加えませんので」
「…」
「これは主からの命令で行われた事です。主は決してあなた様を傷つけるなという命令を出されました」
「あ、るじ…?」
「…」

女性は少しだけ表情を崩して、其のまま部屋から出て行こうとした。

「ま、待って…まだ…訊きたい事がっ」

ひとりになる恐怖から女性を引き留めようと重い体を奮い起こしてベッドから腕を伸ばした。

其の瞬間

「あっ」
「!」

バランスを崩して其のまま私はベッドから落ちてしまった。

ドンッという鈍い音が部屋に響き渡った。

「痛っ」
「大丈夫ですか?!何処か痛む処は」
「だ…ぃ、丈夫…」

体を少し打ち付けただけだった。

だけど思うように体に力が入らなかったからひとりで起き上がる事が出来なかった。

「掴まってください」
「ぁ」

女性の柔らかな体が密着して、こんな時だというのに(気持ちがいい)と思ってしまった私だった。

そんな事を考えているといきなりバンッと部屋のドアが勢いよく開いた。

「なんだ、先刻の音は!」

「蒼様」
「…え」

其処に姿を現したのは蒼さんだった。

女性に支えられている私の顔を見て怪訝な表情になった。

「なんだ、どうかしたのか」
「わたしのミスで涙花様をベッドから落としてしまいました」
「はぁ?何やってんだ!あれ程傷ひとつ付けるなと云っただろうが!」
「申し訳ございません」

「…」

蒼さんと女性のやり取りを茫然と見ていると、蒼さんが私の傍までやって来た。

「おい、大丈夫かよ」
「…」
「おい、おまえ…頭でも打っておかしくなったか?」
「んで」
「は?」
「な…んで、蒼さん、が此処、に」
「なんでって此処はオレの別荘だ」
「?!」











(どういう事ぉぉぉぉー?!)


蒼い樹が薫る
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