初恋を諦めてから私は恋とは無縁な日々を過ごす事になった。

中学の時は友だちと其れなりに面白可笑しく過ごした。

高校生になってからは友だちは大抵彼氏が出来て、女同士で遊ぶよりも彼氏を優先させる事が多くなった。

こんな私なんかでも何度か告白をされた事があったけれど、どうしてもお付き合いという行為には躊躇いがあり、結局彼氏無しの青春を謳歌してしまったのだった。


「ねぇ、涙花は高校卒業したらどうするの?」
「卒業…かぁ」

そしてあっという間に将来の夢を明確にして、其れに合った進路を目指さなくてはいけない時期になっていた。

「あたしは隣町にある専門学校に行くの。調理師免許取って実家の料理屋継がなきゃだからさぁ」
「そっか」

友だちの何人かはもうちゃんと将来の事を考えて進路を決めていた。

ただ私は特別なりたい職業も夢もないまま、無為な毎日を過ごしていた。

(いや、夢はあったんだけどなぁ)

小さな頃から抱き続けていた唯一の夢──其れはいっちゃんのお嫁さんになる事だった。

だけど其の夢はもう叶う事がないのだと思い知った時から、私の気持ちは宙ぶらりんになっていたのだ。


進路に関しては田舎のこの町では選択肢は主に2つしかない。

大学に進学したいのなら大学のある街まで行かなければいけない。

一番近い大学でも電車で1~2時間かかる距離にある事から進学する子はほぼ全員町を出て行く。

就職に至っては田舎のこの町ではある程度の求人数しかないからコネや成績優秀者が優遇される。

家が自営業なら其処を継ぐ事が当たり前になっている。

いずれにしろ町で就職先が見つからなかったらやっぱり町を出て行くしかない。

(大学は別に行きたくないんだよね)

勉強嫌いの私にとって其の選択肢は早々になくなった。

そうなると就職──という事になるのだが…

(成績優秀者でもコネがある訳でもない私はどうしたらいいの?)

将来の事を考えると本当に憂鬱になる。

このまま町に留まっていても先は知れている様な気がする。

この先いっちゃん以上に好きになれる人なんて現れるのだろうか?

だけどいつまでも独身でいればきっと周りからお見合い話なんかを持ち出されて、適当に妥協して結婚してしまう未来が待っている様な気がしてならない。

(其れは…厭だなぁ)

でもだからといって住み慣れた町を出て、ひとり知らない土地で働くという事にも抵抗があった。

(はぁ…本当どうしよう)

先行き不安な気持ちを抱きつつ帰路をトボトボ歩いていると

「るいちゃーん」

遠くから声を掛けられハッと我に返った。

声がした方に視線を向けると、其処にはよく知った顔があった。

「るいちゃん!」
「幹くん、どうしたの慌てて」

凄い血相で私の元に駆け寄って来た幹(ミキ)くんは、いっちゃんの10歳年下の弟だ。

現在中学1年生の幹くんとはいっちゃんがいた頃から仲が良くて、いっちゃんがいなくなった今でも私は幹くんを弟の様に可愛がっていた。

「大変!兄ちゃんから電話あったの!」
「──えっ」

其れはある日突然、私に降って湧いた驚きの報告だった。

蒼い樹が薫る
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