『私…もう海斗と友だち、止める』


其れを訊いた海斗は、今まで見た事がないくらい青ざめ其のまま固まってしまった。


(わっ、こんな海斗、初めて見た)


私は海斗を見つめながら、少し脅かし過ぎたかなと思った。

そして私は改めて海斗に告げる。


「私、海斗とはもう友だちっていう関係ではいられない」
「…」
「だって…友だちとはセックスなんてしないから」
「…あぁ」
「だから海斗とは…セックスしてもいい関係に、なる」
「──え」

瞬間、海斗の表情は強張り、徐々に緩んで行った。

「…云っている意味、解る?」
「凪子、其れって…つまり」
「だけどフラれたばかりの私がこんなに簡単に海斗に乗り換えて…いいの?」
「! 凪子」
「わっ」

いきなり海斗の大きな体が私に抱き付いて来た。

其の強く息苦しく感じる抱擁にもがきながらも、心の何処かでは嬉しさを感じている。


「なんで…なんで俺と…いいのか?本当に」
「なんでって…そんなの私にも解らないよ…でも私にとって海斗は大切な友だちで…だけど今思えば、康彦よりもずっと身近にいて…だから見えなかった、気づかなかった気持ちっていうのがあったのかも知れない」
「凪子…」
「康彦がダメだったから海斗にって…もしかしたらそんな都合のいい様に考えているのかも知れない」
「…」
「だけど私、海斗とセックスしても…全然厭じゃなかったんだもん」
「…そうか」
「うん…だから…海斗とは友だちとしてじゃなく、男として…彼氏として付き合ってみようかなと思った」
「ありがとう、凪子」
「…海斗」


本当にいきなりの事だった。


ほんの数日、数時間前までは康彦こそが私の運命の相手なんだと信じていた。


好きだった。


本当に愛していた。


其の気持ちに偽りはないけれど…


だけど裏切られていたのだと知った瞬間から其の気持ちは少しの事で揺らぎ、薄らぎ、壊れて行った。



──そんな私の心の隙間に海斗はスルリと入り込んだ



海斗の行動が、行為が厭だと思う事もなく、私はやけにストンと海斗の気持ちを受け入れられたのだ。


「凪子、好きだ。ずっと愛していた。これからは彼女として──おまえを絶対に幸せにする」
「ん、よろしくね、海斗」


抱き合っていた私たちは、其のまま其の場に倒れ込んでまたお互いを求め合い始めた。


(どうしてこんなに急に海斗の事が好きになったのか解らない)


ただ、もしかして私は高校生の時から海斗の事を好きだったのかも知れない。

でも其の気持ちを認めて突き進むには周りの環境が赦さなかった。

私には康彦という存在があったし、海斗は女を嫌悪していて且つ私を女として見る事はないと知っていた。

だから私の本当の心は奥深くに沈められたのかも知れない。


海斗は友だち──


そんな呪文のような肩書きを心に刻み込んで、本当の気持ちを見ないようにしていただけだったのかも知れない。




「凪子、凪子」
「ん、海斗…もう……」

がむしゃらに私の中を冒す海斗の楔は折れる事無く何度も奥へ奥へと突き刺した。

其の痺れるような快感に甘ったれた喘ぎ声を出して、悶える私は海斗の体を放すまいとしがみつく。

そしてまた何度も私の中には海斗の荒ぶった熱が流し込まれる。

其の温かくて心地のいい感覚は、今まで味わった事のない生身の行為だと知り、いつまでも呆けてしまう私だった。



(あ…そういえば海斗に云わなくっちゃ)


海斗と付き合うと決めた私は、気がかりだった事にひとつの解決策を見出した。


こんな展開になって全てはいい方向に向かうのだと信じて疑わない私だった。


fl
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